2026年10月17日の富士S(GII)は、12番人気シュガークンが優勝しました。
2着は2番人気アンパドゥ、3着は4番人気エコロアルバ。単勝は4,160円、馬連は12,340円、三連単は23万3,300円と波乱の決着です。
事前のAI指数では、シュガークンを5位・p_win=0.0748、アンパドゥを3位・p_win=0.0829と評価していました。つまりAI上位5頭から1、2着馬が出たことになります。
特にシュガークンは予想段階で45.9倍の10番人気想定、実際には41.6倍の12番人気。長距離路線からの大幅な距離短縮という、人間側では評価しづらい条件の馬をAIが上位に残していた点は今回の大きな収穫でした。
一方、AI1位ミトノオルフェは11着、2位シンフォーエバーは13着。事前に「AIと人間の評価差を観察したい」と書いた2頭はともに大敗しました。
そして、この明暗を分けた大きな要因として無視できないのが想定とは正反対になったハイペースです。
今回は「AIが穴馬を拾えた」という結果だけではなく、指数を見るうえで展開をどう扱うべきかという課題まで見えてきたレースでした。
- 富士Sの結果とAI指数を振り返る
- 12番人気シュガークン勝利|距離短縮への懸念をハイペースが消した
- p_win=7.48%をどう評価するか
- AI3位アンパドゥは2着|こちらは評価通りの好走
- AI1位ミトノオルフェ11着|高評価そのものより「展開との相性」が問題だった
- AI2位シンフォーエバー13着|こちらはさらに典型的な展開負け
- AI4位ファンダムも10着|AI上位5頭の明暗は位置取りで分かれた
- 3着エコロアルバはAI上位外でも内容は強かった
- 1番人気トロヴァトーレは12着
- アドマイヤズームは6着|前で踏ん張った分、悲観しすぎなくていい
- 最大の教訓は「指数順位だけでは展開を説明できない」
- 今後モデルで検証したい3つの項目
- AI指数の順位より「確率の分布」を見る意味
- まとめ
富士Sの結果とAI指数を振り返る
事前のAI上位5頭と実際の結果を並べると、次のようになります。
| AI順位 | 馬名 | p_win | 最終人気 | 着順 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ミトノオルフェ | 0.1539 | 13人気 | 11着 |
| 2位 | シンフォーエバー | 0.1131 | 14人気 | 13着 |
| 3位 | アンパドゥ | 0.0829 | 2人気 | 2着 |
| 4位 | ファンダム | 0.0798 | 6人気 | 10着 |
| 5位 | シュガークン | 0.0748 | 12人気 | 1着 |
まず目立つのは、AI5位シュガークンの勝利です。
そして3位アンパドゥも2着。
指数順そのものはきれいではありませんが、上位5頭の中に1、2着馬が入っていたという結果になりました。
一方で、AI1、2位がともに二桁着順まで沈んだのも事実です。
したがって今回を「AI大成功」とだけまとめるのは違います。
むしろ、
穴馬を拾った能力と、上位2頭を過大評価した原因の両方を検証できるレースだった
と考える方が、この観察ログの目的には合っています。
12番人気シュガークン勝利|距離短縮への懸念をハイペースが消した
今回もっとも興味深かったのは、やはりシュガークンでしょう。
事前の馬柱を見ると、近走は宝塚記念2200m、新潟大賞典2000m、その以前には東京優駿2400m、青葉賞2400m。完全に中長距離路線を歩んできた馬です。富士Sではそこから一気に1600mへ距離を縮めました。
事前記事でも、
「マイルのスピードについていけるのか」
という点を最大の疑問としていました。
ところが、実際のレースはその不安を逆方向から打ち消す形になります。
レースラップは、
| 距離 | 通過 | 区間 |
|---|---|---|
| 200m | 12.2 | 12.2 |
| 400m | 22.6 | 10.4 |
| 600m | 33.5 | 10.9 |
| 800m | 44.9 | 11.4 |
| 1000m | 56.7 | 11.8 |
| 1200m | 1:08.9 | 12.2 |
| 1400m | 1:20.5 | 11.6 |
| 1600m | 1:32.2 | 11.7 |
前半600mが33.5秒、1000mが56.7秒。
公式のペース判定も「H」です。
事前の競馬新聞ではスローペース想定でした。
ところが実際は真逆。
このハイペースこそ、中長距離を走ってきたシュガークンにとってプラスに働いた可能性があります。
1600mで瞬発力だけを問われるレースではなく、前半から速いラップを刻み続けたことで、後半には一定の持久力も必要になりました。
シュガークンは3~4コーナーでは中団より後ろ。
前半の争いには付き合わず、そこから直線で伸びています。
上がり3Fは33.7秒。
単に「前が止まったから拾った」という内容でもありません。
前半を消耗せず、最後まで速い脚を維持できたことが勝利につながりました。
事前には「距離短縮が不安」と見ていましたが、結果的には、
長距離で培った持続力+高速マイルへの対応力
という組み合わせが成立した形です。
p_win=7.48%をどう評価するか
もう一つ興味深いのがシュガークンの数値です。
AI5位ながら、
p_win=0.0748
でした。
約7.5%です。
単純に逆数を取れば、確率上のフェアオッズは約13.4倍。
一方、実際の単勝は41.6倍でした。
もちろん、この数字をそのまま馬券期待値として扱えるほどモデルの確率校正が正確かは別問題です。
ただ、
市場評価とモデル評価の乖離が非常に大きかった
ことは間違いありません。
今回の結果を見て、「AI5位だから勝ち馬を当てた」と考えるより、
「人間側が12番人気まで評価を落とした馬を、AIは7.5%の勝率候補として残していた」
と考えた方が意味があります。
このタイプの乖離を長期的に集めていけば、指数を回収率につなげるヒントになりそうです。
AI3位アンパドゥは2着|こちらは評価通りの好走
2着アンパドゥは、今回もっとも素直に評価できる結果でした。
AI3位、p_win=8.29%。
市場では2番人気でした。
前走の関屋記念では不良馬場ながら後方から突き抜け、2着クランフォードに0.9秒差。東京1600mでも分倍河原Sを勝っており、近走内容とコース適性の両面から人気になる理由がありました。
今回も3~4コーナーでは中団よりやや後ろ。
前半33.5秒という流れに無理に付き合わず、直線で伸びました。
勝ったシュガークンとの差は0.1秒。
上がり34.1秒で2着です。
前走ほど派手な末脚ではありませんでしたが、速い流れになったことでこの馬の差し脚がきれいに生きています。
今回のAI上位5頭の中では、
事前の能力評価と実際のレース内容が最も一致した馬
だったと言ってよさそうです。
AI1位ミトノオルフェ11着|高評価そのものより「展開との相性」が問題だった
一方、大きく外れたのがAI1位ミトノオルフェです。
p_win=15.39%。
AI上は今回もっとも勝つ確率が高い馬でした。
しかし結果は11着。
事前には52.3倍の11番人気想定でしたが、最終的には89.4倍の13番人気まで評価を落としています。
近2走で1400mを連勝しており、AIはその上昇度をかなり強く評価していたと考えられます。実際、心斎橋Sと岡崎特別を連勝してオープン入りしていました。
しかし今回は位置取りが厳しくなりました。
3コーナーでは2番ミトノオルフェが比較的前の集団。
そのとき先頭集団が刻んでいたのは、
600m33.5秒、1000m56.7秒
という流れです。
1400mで好走していた馬なので速い流れそのものは問題なさそうに見えますが、1600mへの延長でこのペースを前から受ければ話は違います。
直線では余力を失い、11着。
ここはAIの能力評価そのものだけではなく、
「その能力を今回の展開でどの位置から使うことになるのか」
という要素が不足していた可能性があります。
AI2位シンフォーエバー13着|こちらはさらに典型的な展開負け
シンフォーエバーも同じです。
AI2位でp_win=11.31%。
最終的には236.4倍の14番人気。
そして13着でした。
3コーナーの通過を見ると、3番シンフォーエバーは12番エンペラーズソードと並ぶ形で先頭。
つまり今回のハイペースを作った側です。
前半400mの10.4秒、600mまで33.5秒。
この流れを先頭付近で受けています。
近3走が17着、14着、13着だった馬をAIが2位まで評価したこと自体は、今回の結果から見ると明確な過大評価でした。馬柱からも近況の裏付けは乏しかった馬です。
ただし、単純に「AIが能力を読み違えた」で終わらせるより、
前へ行く可能性の高い人気薄を、展開補正なしで高く評価していた
ことに注目したいところです。
これは今後の改善につながる失敗です。
AI4位ファンダムも10着|AI上位5頭の明暗は位置取りで分かれた
AI4位ファンダムも10着でした。
ファンダムは直近のしらさぎS、京成杯AHで連続して重賞4着。どちらも勝ち馬との差は0.1~0.2秒で、事前に評価しやすい馬でした。
今回もシンフォーエバーほどではありませんが、3~4コーナーでは勝ち馬シュガークンやアンパドゥよりかなり前。
結果として伸びを欠きました。
今回のAIトップ5を位置取りで大きく分けると、かなり分かりやすくなります。
| 馬 | AI順位 | レース位置 | 結果 |
|---|---|---|---|
| ミトノオルフェ | 1位 | 前寄り | 11着 |
| シンフォーエバー | 2位 | 先頭付近 | 13着 |
| アンパドゥ | 3位 | 中団後方 | 2着 |
| ファンダム | 4位 | 中団前寄り | 10着 |
| シュガークン | 5位 | 中団後方 | 1着 |
きれいに分かれました。
もちろん、競馬は位置取りだけで決まるものではありません。
ただ今回に限っては、
AI上位馬の能力差以上に、ハイペースをどこで受けたかが結果に影響した
と考えるのが自然です。
3着エコロアルバはAI上位外でも内容は強かった
3着は4番人気エコロアルバ。
AIトップ5には入っていませんでした。
ここはモデル側の反省材料です。
エコロアルバは昨年のサウジアラビアRCを東京1600mで勝利。今年のしらさぎSでも古馬相手に0.1秒差の3着でした。
つまり、
- 東京1600m実績
- 3歳馬で55kg
- すでに古馬重賞で通用
という材料がありました。
そして今回さらに評価したいのは位置取りです。
エコロアルバはシュガークンやアンパドゥよりかなり前で競馬しています。
それでも3着。
上がりは34.9秒でしたが、前半のハイペースをある程度追走しながら最後まで残りました。
勝ち馬より展開面では厳しかったとも考えられます。
単純な着順以上に内容は濃く、今後もマイル路線では注目したい馬です。
AIがここをトップ5から外した理由についても、今後検証する価値があります。
1番人気トロヴァトーレは12着
一方、市場側でも大きな誤算となったのがトロヴァトーレです。
単勝3.2倍の1番人気ながら12着。
東京新聞杯、エプソムCを勝っている東京巧者で、事前の馬柱だけなら非常に買いやすい存在でした。
AIではトップ5外。
結果だけ見れば、こちらはAI側の低評価が正解でした。
ただし、「AIがトロヴァトーレの凡走を予見していた」とまでは言えません。
今回は後方からでも上位に来られる展開だったにもかかわらず、トロヴァトーレは12着。
展開不利だけでは説明しにくい内容です。
したがって、
人気馬の危険度をAIが正しく捉えていた可能性
については、今後類似ケースを蓄積して確認したいところです。
アドマイヤズームは6着|前で踏ん張った分、悲観しすぎなくていい
3番人気アドマイヤズームは6着。
AIトップ5には入りませんでした。
3~4コーナーでは比較的前の位置におり、今回のハイペースを考えれば簡単な競馬ではありませんでした。
直線では勝ち負けには加われませんでしたが、前にいた組が総じて崩れる中で6着。
結果だけなら期待を下回っていますが、内容まで大きく評価を落とす必要はなさそうです。
今回は、
差し馬有利になった流れの中で前から踏ん張った馬
を、次走以降どう扱うかも重要になりそうです。
最大の教訓は「指数順位だけでは展開を説明できない」
今回の富士Sから得られた最大の教訓はここでしょう。
事前のAI指数は能力比較としては一定の情報を持っていました。
実際、
- AI5位シュガークン → 1着
- AI3位アンパドゥ → 2着
でした。
しかし、
- AI1位ミトノオルフェ → 11着
- AI2位シンフォーエバー → 13着
- AI4位ファンダム → 10着
です。
この差を説明するうえで、今回のラップを無視することはできません。
事前はスロー想定。
実際はハイペース。
つまり、
レース前に想定していた世界そのものが変わった
とも言えます。
AIが馬個体の能力をかなり精密に評価できたとしても、
「誰が逃げるのか」
「何秒で600mを通過するのか」
「その馬がどの位置でそのペースを受けるのか」
によって結果は大きく変わります。
今回のAI1~5位は、そのことを分かりやすく示しました。
今後モデルで検証したい3つの項目
今回の結果から、今後のモデル改善で特に確認したいのは次の3点です。
まず脚質×想定ペースです。単に「逃げ・先行・差し」という特徴量だけではなく、その馬が想定されるペースの中でどれだけ負荷を受けるかを表現できると、今回のようなケースに強くなる可能性があります。
次に休み明け評価です。AI1位ミトノオルフェは6カ月半ぶり、AI2位シンフォーエバーは4カ月ぶりでした。どちらも人気薄ながら指数上位。休養前の能力を強く残しすぎていないかは確認したいところです。
そして最も面白いのが距離変更×展開でしょう。
シュガークンだけを見れば、「2000~2400mから1600mへの短縮」という条件はマイナスに見えました。
しかし今回のようなハイペースなら、その長距離適性が最後の持続力としてプラスに転じる可能性があります。
単なる距離適性ではなく、
今回どのような1600m戦になるのか
まで考える必要がありそうです。
AI指数の順位より「確率の分布」を見る意味
今回、もう一つ残しておきたいのが指数順位の読み方です。
AI1位ミトノオルフェは15.39%。
AI5位シュガークンは7.48%。
確かに約2倍の差があります。
しかし、15.39%は「本命だから高確率で勝つ」という数字ではありません。
逆に7.48%も、14頭立ての重賞なら無視できるほど小さな数字ではありません。
今回シュガークンが勝ったことで、
「AI5位なのに当たった」
と感じるかもしれません。
しかし確率モデルとして考えれば、
約7.5%の事象が実現しただけ
とも言えます。
むしろ重要なのは、その7.5%を市場が41.6倍まで評価していなかったことです。
この「順位ではなく確率を見る」という姿勢は、長期的なAI予想を考えるうえで重要になりそうです。
まとめ
2026年富士Sは、12番人気シュガークンが1分32秒2で勝利しました。
2着はアンパドゥ、3着エコロアルバ。
AI指数ではシュガークンを5位・p_win=7.48%、アンパドゥを3位・8.29%としており、AI上位5頭から1、2着馬が出る結果になりました。
特に中長距離路線から一気に1600mへ短縮したシュガークンを、12番人気ながら上位評価していた点は大きな収穫です。
一方、AI1位ミトノオルフェは11着、2位シンフォーエバーは13着。
こちらは明確に期待を裏切りました。
その背景として重要だったのが、事前のスロー予想とは正反対のハイペースです。
前半600m33.5秒、1000m56.7秒。
前でこの流れを受けたAI上位馬が崩れ、中団後方にいたシュガークンとアンパドゥが1、2着。
今回の結果を見る限り、
能力指数だけではなく「その能力をどの展開・位置取りで使えるか」を組み合わせる必要がある
ことが改めて分かりました。
そしてもう一つ。
AI予想の価値は、必ずしも「指数1位が勝つこと」だけではありません。
今回のように、市場では12番人気まで評価を落としていたシュガークンを、モデルが上位5頭に残していた。そのズレを継続して記録し、どの条件で再現するのかを確認することにも意味があります。
的中した馬だけを称賛せず、ミトノオルフェとシンフォーエバーをなぜ高く評価しすぎたのかまで含めて残しておきたい。
富士Sは、AIの強みと弱点が同時に見えた、非常に有益な一戦になりました。


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