競馬を予想していると、同じくらい強そうな馬でも「誰が乗るか」で印象が変わることがあります。
有力騎手への乗り替わりなら安心感が増しますし、逆に人気馬へ普段あまり勝っていない騎手が乗っていると、少し不安になることもあります。
ただ、ここで一つ疑問があります。
その「騎手への安心感」は、本当にデータでも確認できるのでしょうか。
さらに馬券的には、もう一段難しい問題があります。
ルメール騎手や川田将雅騎手のような実績のある騎手は、騎乗馬も人気になりやすいです。
そのため、
「上手い騎手だから勝つ」
だけではなく、
「上手い騎手だから必要以上に売れている」
可能性もあります。
つまり、人気騎手は本当に人気馬をしっかり勝たせているのか。それとも名前込みで過剰人気になっているのか。
今回は2015年から2025年までの中央競馬データを使い、騎手別の勝率・複勝率をオッズ条件ごとに分けて観察してみました。
- 今回の観察テーマ
- 観察の前提
- 集計時の条件
- 騎手別の勝率・複勝率
- 単勝15倍以内に限定するとどうなるか
- 単勝10倍以内まで絞ってみる
- 「10倍以内で勝率が高い」だけでは騎手の差とは言えない
- 当初の「人気騎手は過剰人気」という仮説はどうなったか
- 信頼できることと儲かることは別
- 「ルメールだから安心」は数字上ある程度理解できる
- 本当に騎手差を見るならオッズ帯を細かく分けたい
- 勝率ではなく「市場の期待以上に走ったか」を見たい
- 複勝率にも同じことが言える
- 若手騎手の数字はサンプル数にも注意したい
- 騎手の数字には「騎乗馬の質」が常につきまとう
- 「乗り替わり」で比較すると騎手効果が見えるかもしれない
- コース・距離との相性も分解したい
- 騎手という特徴量をAIはどう使うべきか
- 今回の結果だけでは「買える騎手ランキング」ではない
- 仮説は「人気騎手は危険」から少し変わった
- 次に観察したいこと
- まとめ
今回の観察テーマ
今回知りたいのは、単純な「騎手ランキング」ではありません。
注目したのは、
人気を背負った馬へ乗ったとき、それでも安定して結果を出している騎手はいるのか
という点です。
当初は、次のような仮説を持っていました。
リーディング上位騎手は名前だけでも馬券が売れやすく、人気馬ではむしろ過剰人気になっているのではないか。
競馬では「ルメールだから売れる」「川田だから人気する」といった話をよく聞きます。
それなら、有力騎手の勝率自体は高くても、人気馬に限定したときには他の騎手との差が小さくなる可能性があります。
逆に、人気馬でも上位騎手の成績が明確に高いなら、
「強い馬を任されたときに取りこぼしにくい」という騎手差
が存在するのかもしれません。
まずはデータを確認します。
観察の前提
今回使用したのは、JRA-VAN Data Lab.から取得した中央競馬データです。
単勝オッズや着順などを出走馬単位で整理し、騎手ごとに騎乗数、勝利数、3着以内数、勝率、複勝率を集計しました。
※本記事はJRA-VAN Data Lab.のデータを基に、筆者が独自に加工・集計したものです。
対象期間は2015年から2025年です。
短期間だけを見ると、騎乗馬の質や偶然の連勝などによって成績が大きく振れるため、ある程度長い期間を取っています。
集計時の条件
今回はできるだけ比較しやすくするため、対象データを次のように整理しています。
- 中央競馬10場のみ対象
- 取消・競走中止・失格などを除外
- 欠損値など集計に適さないデータを除外
- 今回比較した騎手については現役のJRA騎手を中心に抽出
- 短期免許騎手、地方所属騎手、引退騎手は原則として比較対象外
そのうえで、
全騎乗。
単勝15倍以内。
単勝10倍以内。
の3パターンに分けました。
ここで注意したいのは、オッズを絞れば当然ながら勝率や複勝率は上昇しやすいということです。
今回見たいのは「10倍以内だから勝率が高い」という当たり前の話ではありません。
同じように人気馬へ乗ったときでも、騎手間でどの程度数字に差があるのか
を観察します。
騎手別の勝率・複勝率
まずはオッズ条件を付けず、2015~2025年の全体成績です。
| 順位 | 騎手名 | 騎乗数 | 勝利数 | 複勝数 | 勝率(%) | 複勝率(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ルメール | 7,559 | 1,869 | 4,120 | 24.73 | 54.50 |
| 2 | 川田将雅 | 6,258 | 1,415 | 3,251 | 22.61 | 51.95 |
| 3 | 戸崎圭太 | 8,800 | 1,364 | 3,544 | 15.50 | 40.27 |
| 4 | 武豊 | 6,718 | 945 | 2,589 | 14.07 | 38.54 |
| 5 | 横山武史 | 6,421 | 765 | 2,099 | 11.91 | 32.69 |
| 6 | 松山弘平 | 9,603 | 1,082 | 3,013 | 11.27 | 31.38 |
| 7 | 岩田望来 | 5,337 | 601 | 1,681 | 11.26 | 31.50 |
| 8 | 田辺裕信 | 7,010 | 753 | 2,228 | 10.74 | 31.78 |
| 9 | 坂井瑠星 | 5,835 | 626 | 1,772 | 10.73 | 30.37 |
| 10 | 横山典弘 | 4,384 | 469 | 1,327 | 10.70 | 30.27 |
まず目につくのは、ルメール騎手と川田騎手です。
ルメール騎手は勝率24.73%、複勝率54.50%。川田騎手も勝率22.61%、複勝率51.95%でした。
単純計算では、両騎手とも騎乗機会の半数以上で3着以内に入っています。
ただし、この数字だけでは「騎手が上手いから」と結論付けられません。
上位騎手ほど有力馬へ乗る機会が多いためです。
そこで、ある程度人気している馬だけへ条件をそろえて見てみます。
単勝15倍以内に限定するとどうなるか
次に単勝15倍以内の馬だけへ絞りました。
| 順位 | 騎手名 | 騎乗数 | 勝利数 | 複勝数 | 勝率(%) | 複勝率(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ルメール | 7,219 | 1,863 | 4,079 | 25.81 | 56.50 |
| 2 | 川田将雅 | 5,671 | 1,394 | 3,153 | 24.58 | 55.60 |
| 3 | 戸崎圭太 | 6,990 | 1,320 | 3,312 | 18.88 | 47.38 |
| 4 | 高杉吏麒 | 549 | 98 | 251 | 17.85 | 45.72 |
| 5 | 松山弘平 | 5,556 | 989 | 2,511 | 17.80 | 45.19 |
| 6 | 坂井瑠星 | 3,162 | 560 | 1,473 | 17.71 | 46.58 |
| 7 | 岩田望来 | 3,102 | 544 | 1,410 | 17.54 | 45.45 |
| 8 | 横山和生 | 2,098 | 364 | 932 | 17.35 | 44.42 |
| 9 | 西塚洸二 | 445 | 77 | 179 | 17.30 | 40.22 |
| 10 | 横山武史 | 4,156 | 715 | 1,859 | 17.20 | 44.73 |
ここでもルメール騎手と川田騎手が上位です。
さらに戸崎圭太騎手、松山弘平騎手、坂井瑠星騎手、岩田望来騎手、横山武史騎手など、近年リーディング上位で目にする騎手が並びます。
興味深いのは、「15倍以内まで絞ったら上位騎手の差がほとんど消えた」という結果にはなっていないことです。
もちろんオッズ帯が広いため、厳密には同じ条件とは言えません。
単勝1.5倍の馬と14倍の馬では能力期待値がまったく違うからです。
それでも、有力馬へ乗る機会が多い騎手が、人気馬へ限定しても上位に残っている点は気になります。
単勝10倍以内まで絞ってみる
さらに対象を単勝10倍以内へ絞ります。
| 順位 | 騎手名 | 騎乗数 | 勝利数 | 複勝数 | 勝率(%) | 複勝率(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ルメール | 6,853 | 1,832 | 3,976 | 26.73 | 58.02 |
| 2 | 川田将雅 | 5,209 | 1,352 | 3,008 | 25.96 | 57.75 |
| 3 | 戸崎圭太 | 6,043 | 1,262 | 3,050 | 20.88 | 50.47 |
| 4 | 高杉吏麒 | 421 | 87 | 215 | 20.67 | 51.07 |
| 5 | 坂井瑠星 | 2,572 | 525 | 1,318 | 20.41 | 51.24 |
| 6 | 横山和生 | 1,605 | 324 | 796 | 20.19 | 49.60 |
| 7 | 松山弘平 | 4,452 | 894 | 2,203 | 20.08 | 49.48 |
| 8 | 岩田望来 | 2,505 | 498 | 1,246 | 19.88 | 49.74 |
| 9 | 横山琉人 | 353 | 70 | 162 | 19.83 | 45.89 |
| 10 | 池添謙一 | 2,142 | 422 | 1,068 | 19.70 | 49.86 |
10倍以内まで絞ると、上位では勝率20%前後、複勝率50%前後まで数字が上がってきます。
ルメール騎手は勝率26.73%、複勝率58.02%。
川田騎手も勝率25.96%、複勝率57.75%です。
つまり単勝10倍以内の騎乗では、両騎手とも4回に1回以上勝ち、6割近く3着以内に入っています。
戸崎騎手、坂井騎手、松山騎手、岩田望来騎手なども勝率20%前後に集まりました。
数字だけを見ると、
「人気馬に乗った上位騎手はやはり強い」
と感じます。
ただし、ここからが今回の観察で一番重要な部分です。
「10倍以内で勝率が高い」だけでは騎手の差とは言えない

例えばルメール騎手の10倍以内勝率が26.73%、別の騎手が20%だったとします。
これだけを見ると、
「ルメール騎手の方が人気馬を勝たせる能力が高い」
と言いたくなります。
しかし、単勝10倍以内はかなり広い範囲です。
ルメール騎手には単勝1倍台や2倍台の馬が多く、別の騎手には5~10倍の馬が多い可能性があります。
そうなら、勝率差の一部は当然です。
つまり今回の数字から言えるのは、
有力騎手は人気馬へ乗ったときにも高い勝率・複勝率を残している
ところまでです。
「同じ能力の馬に乗せても騎手によってこれだけ差が出る」
とまでは言えません。
ここは元々持っていた仮説を考えるうえでも重要でした。
当初の「人気騎手は過剰人気」という仮説はどうなったか

今回の観察を始めた時点では、
「有名騎手は騎手人気でオッズが下がりすぎているのではないか」
と考えていました。
しかし勝率・複勝率を見る限り、少なくとも、
「人気しているのに全然走っていない」
という単純な結果ではありませんでした。
むしろ上位騎手は人気馬へ乗っても、かなり高い確率で上位へ持ってきています。
この点だけなら、
騎手への人気には、それなりの実績的裏付けもある
と考えた方がよさそうです。
ただし、これでも「過剰人気ではない」とは言えません。
ここには勝率と回収率の違いがあります。
信頼できることと儲かることは別
例えばある騎手が単勝2倍前後の馬へ乗ったとき、非常に高い確率で勝つとします。
馬券購入者から見れば、
「この騎手なら安心」
です。
しかし、勝率が40%しかないのに平均オッズが2倍なら、
0.40 × 2.0 = 0.80
です。
単純化すれば期待値は80%しかありません。
逆に勝率20%でも平均オッズ6倍なら、
0.20 × 6.0 = 1.20
になります。
つまり、
人気馬を高確率で勝たせる騎手と、馬券として儲かる騎手は同じとは限りません。
今回の勝率・複勝率ランキングは、どちらかといえば「信頼度」を見ています。
「期待値」を見るには、次に回収率まで計算する必要があります。
「ルメールだから安心」は数字上ある程度理解できる
それでも今回のデータを見て面白かったのは、競馬ファンが感覚的に持っている印象と一部重なることです。
例えば、
「人気馬のルメールはなかなか飛ばない」
「川田の人気馬は相手から外しにくい」
という感覚です。
単勝10倍以内で複勝率が約58%ということは、もちろん4割以上は馬券圏外になります。
絶対に安全ではありません。
それでも数千回単位の騎乗でこの数字を残しているなら、「何となく安心する」という感覚が完全な思い込みとも言い切れません。
一方で、だからといってそのまま買えば勝てるわけではありません。
むしろ多くの競馬ファンが同じ安心感を持っているからこそ、オッズが下がっている可能性があります。
ここが競馬の難しいところです。
本当に騎手差を見るならオッズ帯を細かく分けたい
次に試したいのは、15倍以内・10倍以内という大きな括りではなく、もっと細かいオッズ帯です。
例えば、
1.0~1.9倍。
2.0~2.9倍。
3.0~4.9倍。
5.0~9.9倍。
10.0~14.9倍。
というように分けます。
同じ2倍台の馬へ乗ったとき、
ルメール騎手は何%勝つのか。
川田騎手は何%勝つのか。
戸崎騎手はどうなのか。
ここまでそろえれば、現在より騎手差を比較しやすくなります。
さらに人気順位でも、
1番人気。
2番人気。
3番人気。
と分ける方法があります。
「1番人気のルメール」
と、
「1番人気の別騎手」
を比較するわけです。
勝率ではなく「市場の期待以上に走ったか」を見たい
さらに一歩進めるなら、オッズを基準にして比較してみたいです。
例えば単勝4倍なら、市場は単純には25%前後の勝率を想定しているように見えます。
実際には控除などがあるので、そのまま真の確率とは言えませんが、比較の基準にはできます。
そこで、
市場が20%程度と評価している馬を25%勝たせている騎手。
市場が20%程度と評価している馬を18%しか勝たせていない騎手。
を比較します。
こうすると、
「強い馬にたくさん乗っている」
という影響を少し切り離せるかもしれません。
競馬AI的には、単純な騎手勝率より、
市場期待勝率との差
を特徴量として持つ方が面白そうです。
複勝率にも同じことが言える
今回の集計では複勝率も見ています。
複勝率は、単勝よりも「大崩れしにくさ」を見るには分かりやすい数字です。
特に人気馬では、
「勝ち切れるか」
と、
「少なくとも馬券圏内へ来るか」
を分けて見る意味があります。
例えば勝率はそこまで突出していなくても、複勝率が高い騎手なら、ワイドや三連系の軸では扱いやすい可能性があります。
逆に勝率は高いが、飛ぶときには着外まで落ちるタイプなら、単勝と複勝系で評価が変わります。
ただし、これも最終的には複勝オッズや組み合わせオッズまで見なければ馬券的価値は判断できません。
「信頼できる軸」と「儲かる軸」は別です。
若手騎手の数字はサンプル数にも注意したい
今回の上位には、高杉吏麒騎手、西塚洸二騎手、横山琉人騎手など、ベテラン勢より騎乗数が少ない騎手も入っています。
例えば数百騎乗と数千騎乗では、数字の安定度が違います。
騎乗数400回で勝率20%だった騎手と、6,000回で20%だった騎手。
表面上は同じ20%ですが、後者の方が長期間にわたって数字を維持しています。
若手騎手の高い数値は非常に興味深い一方、
今後騎乗数が増えても同じ水準を維持できるか
まで観察したいところです。
ここは「競馬予想の実績は何レースあれば信用できるのか」という話とも似ています。
騎手の数字には「騎乗馬の質」が常につきまとう

騎手成績を分析するときに避けて通れないのが、騎乗馬の質です。
強い騎手だから強い馬が集まる。
強い馬が集まるから勝率が上がる。
さらに勝率が上がるから、もっと有力馬が集まる。
この循環があります。
つまり騎手勝率だけを見て、
「ルメール騎手が乗ると馬の勝率が25%になる」
とは考えられません。
そもそもルメール騎手が乗る時点で、能力の高い馬である可能性が高いからです。
これは機械学習でいう交絡に近い問題です。
騎手の能力と馬の能力が強く結び付いています。
本当に騎手だけの寄与を取り出すのは簡単ではありません。
「乗り替わり」で比較すると騎手効果が見えるかもしれない
ここで少し面白そうなのが、乗り替わりです。
同じ馬について、
前走A騎手。
今回ルメール騎手。
となったとき、成績がどう変化するか。
逆に、
前走ルメール騎手。
今回別騎手。
ではどうなるか。
もちろん相手関係や距離、馬場、馬の状態も変わるため単純ではありません。
それでも「馬自体の能力」をある程度固定したうえで騎手変更を見る方法としては興味があります。
特に、
人気がどれだけ変化したか。
実際の着順がどう変化したか。
回収率がどうなったか。
まで比較すれば、
「有力騎手への乗り替わりは本当にプラスなのか。それとも人気だけ上がるのか」
という疑問へ近づけそうです。
コース・距離との相性も分解したい
騎手成績は全国一括だけでなく、競馬場や距離でも変わる可能性があります。
東京の長い直線が得意。
京都外回りの下りを使うのが上手い。
中山の小回りで位置を取りに行くのが得意。
短距離の先行馬で成績が高い。
長距離で折り合いを付けるのが上手い。
こうした違いです。
単純な「騎手勝率」より、
騎手×競馬場。
騎手×距離。
騎手×芝・ダート。
騎手×脚質。
まで分解すれば、AIの特徴量としても面白くなります。
騎手という特徴量をAIはどう使うべきか
今回の数字を見ると、騎手情報を競馬AIへ入れる意味自体はありそうに感じます。
実際、有力騎手とそれ以外で長期的な成績差があります。
しかし単純に、
ルメール=+10。
川田=+9。
のような評価では粗すぎます。
モデル自身に騎手IDを学習させる方法もありますが、さらに、
直近1年勝率。
競馬場別勝率。
距離別勝率。
人気馬騎乗時勝率。
想定勝率との差。
乗り替わり成績。
などへ分解することも考えられます。
特に今回の観察から気になったのは、
人気馬へ乗ったときの実績
です。
すでに市場から高く評価されている馬を、どの程度その期待通りに走らせているか。
この情報には単純なリーディング順位とは違う意味があるかもしれません。
今回の結果だけでは「買える騎手ランキング」ではない
ここは明確にしておきたいところです。
今回出したランキングは、
馬券で買えば儲かる騎手ランキングではありません。
勝率が高い。
複勝率が高い。
というデータです。
むしろ上位騎手ほど人気が集中するなら、回収率は低くなる可能性もあります。
そのため次に調べたいのは、
騎手別単勝回収率。
複勝回収率。
オッズ帯別回収率。
1番人気限定成績。
2~3番人気限定成績。
などです。
ここまで見て初めて、
「信頼できる騎手」
から、
「馬券として評価できる騎手」
へ話を進められます。
仮説は「人気騎手は危険」から少し変わった
今回の観察前は、
「人気騎手は騎手名だけで売れすぎているのでは」
という印象を持っていました。
データを見た後では、少し考え方が変わりました。
確かに過剰人気の可能性はまだあります。
しかし、その一方で、
人気を背負う騎手ほど、実際に高い勝率・複勝率を残している
ことも確認できました。
つまり「騎手人気」という言葉だけで片付けるのも違いそうです。
人気になる。
しかし結果も出している。
だからまた有力馬が集まり、さらに人気になる。
そういう循環があるのかもしれません。
本当に知りたいのは、
「その騎手は強いか」
だけではなく、
「市場が評価している以上に強いのか」
です。
ここまで行くと、勝率ランキングだけでは答えが出ません。
次に観察したいこと
今回の結果から、次の検証テーマも見えてきました。
まず、オッズ帯をさらに細かく分けたいです。
1倍台、2倍台、3~4倍台、5~9倍台などで騎手を比較する。
次に1番人気、2番人気、3番人気別の成績を見る。
そして最も重要なのが回収率です。
勝率25%の騎手でも、平均オッズ3倍なら単純な期待値は低いかもしれません。
逆に勝率15%でも平均オッズ8倍なら面白い可能性があります。
さらに競馬場や距離、芝・ダート、脚質、乗り替わりまで分解すれば、
「人気馬なら誰でも同じではない」
という仮説をもっと細かく検証できそうです。
まとめ
今回は2015~2025年の中央競馬データから、騎手別の勝率・複勝率を全体、単勝15倍以内、単勝10倍以内に分けて観察しました。
結果として、ルメール騎手、川田将雅騎手をはじめとした上位騎手は、人気馬へ対象を絞っても高い勝率・複勝率を残していました。
そのため、
「人気騎手は名前だけで売れていて、人気馬では特に信頼できない」
という最初の仮説は、少し修正した方がよさそうです。
少なくとも今回の数字を見る限り、
人気を背負っても結果を出している騎手は存在する
と考えられます。
ただし、ここで「ルメールを買えば勝てる」という結論にはなりません。
10倍以内という括りでも騎乗馬のオッズ分布は違います。
有力騎手ほど強い馬へ乗っています。
そして何より、勝率が高いことと回収率が高いことは別です。
今回見えたのは、「馬券的な妙味」ではなく、
人気馬を任せたときの結果の安定感
です。
本当に知りたいのは、その次です。
市場が「この騎手なら」と評価してオッズを下げた後でも、それを上回る成績を残しているのか。
単勝2倍台なら誰が強いのか。
5~10倍ではどう変わるのか。
人気馬の勝率は高くても、回収率は100%を超えるのか。
そこまで調べて初めて、
「騎手の名前は馬券の期待値になるのか」
という問いへ近づけそうです。
競馬AIとしても、「騎手が誰か」を特徴量にするだけでは少しもったいない気がします。
人気馬をどれくらい取りこぼさないのか。
市場期待をどれだけ上回っているのか。
どの競馬場、距離、脚質で強いのか。
騎手をもう少し細かく分解すれば、単純なリーディング順位とは違ったものが見えるかもしれません。
今回の観察で分かったのは、
人気騎手だから過剰人気とも、人気騎手だから安心とも、まだ言い切れない
ということです。
ただ、その「まだ分からない」の中に、次に掘るべきデータがかなり見えてきました。





コメント